ちろるちょこ♥大作戦! ―――Missions6 side:水野竜也
寒い、凍死する。と、何度も呟きつつ寺に向かって歩いて行ったけれど、無事凍死も凍傷もかからずに寺に着いた。
いつ見ても、ボロくさい寺だな。(ていうか、お化けが出そうだ。夜。特に丑の刻!)
とりあえず、お邪魔しますといって、靴を脱ぎ、揃えた。シゲは「先に部屋いっといて」と言って、台所のほうに消えていく。こんな暗い所で、俺を一人にするなよ!と、出かかった言葉を飲み込んだ。
俺は言われたとおり、暗くて長い廊下を歩いてシゲの部屋まで向かうがいやにこの寺静かだ。気持ち悪いぐらい静かだ。何時もなら、この時間には他のお弟子さん達が庭掃いたり、食事の準備をしたりと結構微量ながら声が届くし、結構ばたばたしてるんだけど。
「(…へんなの、………)」
怖くなって走ってシゲの部屋まで行った。
後ろを向くのも嫌だ。後ろから、ぽんなんて肩に手をやられたら俺はもう失神するかもしれないし、悲鳴を上げるかもしれない。
いやいや、と俺は慌てて首を振った。出来るだけこういうことは考えないようにしよう。怖いし。
俺は、リュックを下ろし、来ていたコートを脱ぐと適当にたたんで近くに置いて、座布団の敷かれた床に腰を下ろす。
「(コート脱ぐと寒い……)」
けど、とりあえずシゲがきたらストーブ点けてくれるだろうと多少は我慢していたけれど、結局俺は我慢が出来ず後ろのベッドから毛布を引きずり出して自分の身体に巻いた。
「(…においが、なんか…シゲのにおいだ)」
他の女とか男とかの匂いがしても困るんだけれど、なんだかその「シゲの匂いのする毛布」というアイテムに包まれてるというだけで、だんだん恥ずかしくなってくる。別に、変な妄想とか、想像とか、期待はしてないけど。ほんとに。
そういえば、とリュックから携帯を出し、バレンタイン計画の中身を確認する。
・ミッション6
さりげなく渡す。告白。
以上、健闘を祈る♥
俺ってば一体何を考えていたんだろう。
告白、こ、こくは……。
くそう、数十時間前の自分を殴ってやりたい。あーもう、渡すだけですまなかったのか、俺!! 渡すだけで精一杯だってのに、本当、何を考えてたんだ俺は…!!!
しかも、「以上、健闘を祈る♥」って、一体何を考えてたんだよ!いや、色々わかるけど、うあー、うあー。ハートとか入れてるよ、うあーうあー。不破の携帯奪って消去してやりたい…!!!
こうして俺が苦悩している間にも、きっとシゲはこっちに向かってるだろう。とりあえず、次にやることを頭に入れて、携帯を閉じリュックに戻して、毛布に包まってじっとしてた。
「(落ち着くけど、恥ずかしい)」
毛布があったかくなったころ、シゲが部屋に入ってきた。白いコップを二つ持って。
「うわっ、たつぼんなにしとんの!」
「さむい」
「なんでストーブ点けへんの?」
「だってそれ、火傷しそうなんだもん」
シゲの部屋にあるのは、スイッチ一つで点火するタイプではなく、自分でマッチやライターを使って脱脂綿のようなものに、火をつけなければいけない、俺にとっては「危険」とみなされるストーブなのだ。だから俺はこれには火をつけられないし、点けてといわれても困る。
「せーへんて。はい、これ飲んで」
コップをテーブルに置くと、シゲは早速ストーブをつけ始めた。テーブルに置かれたコップに手を伸ばし、近くに寄せると甘ったるい匂いがする。
「なにこれ?」
「シゲちゃん特性蜂蜜檸檬」
ボボ…、と音を立ててストーブの火がついた。
「へー、蜂蜜檸檬て作れるんだ」
「檸檬切って蜂蜜に入れとくだけで出来んで」
ふーふーと息を吹きかけ冷ましながら、一口飲んだ。どっかの自販機とかコンビニで買うジュースよりも、何万倍もおいしい。なんたって、甘めで、俺好みだ。
「…おいしい」
「たつぼんのは、特別」
「え?」
「甘いの好きやん?蜂蜜多めにいれといたわ」
シゲっていつも、こういう変なところで気を利かす。俺は何時も、思い掛けない所で気を使われるからこう、…女の子風にいえば、ときめいちゃったりしちゃったりしなかったり逆だったり…。
シゲはストーブをつけ、立ち上がるとコートを脱いで俺の隣に座った。
「え」
「え?」
「なんで隣座るの、前座れよ」
「あっち寒いやん。入り口近いし。こっちベッドが背もたれなって丁度ええし」
ベッドとか言うな!
いやきっと、相手にとってはただの日常会話だったんだろうけど、メールをみて、自己嫌悪やら恥ずかしさやら、勝手に進む想像やらを抱えてしまってる、俺にとってはもう危険ワードの一つだ。
「…べっ、べ…別に、いいけど」
そんな苦悩(?)も余所に、シゲは蜂蜜檸檬を飲んでいる。くそう、…確信犯なのか?
…。……。
どうやって渡そう。折角今隣に来てるんだから、タイミングとしてはいいよな。うん。問題は切欠なんだよ。
軽いノリで、「しげ、これあげる!」「おー、ありがとなー」とか、もっと、こうムードを作って「シゲ…、俺と一緒にチョコも食べて…!!」「たつぼん!」がばぁっ…!
ぎゃあ!!!
何考えてんだ、俺は!期待してるわけじゃないし、別にしたくないし、あーでも思い出にはって、落ち着け!!!!!
落ち着け、落ち着くんだ!ひーひーふー!(ラマーズ法)
「たつぼん、どないしたん?」
「ぅえっ!?」
「手ぇばたばたしたり、顔真っ赤にしたり……、あ。暑いんか?」
違う、そんな純粋な悩み(?)じゃない。
シゲはなんだか心配してくれてるようで、俺のおでこに手を当て唸っている。熱はないと思うけど。
「あっ!」
シゲが俺の顔をパタパタ手で仰いでくれてやっと気づいた。ストーブが点いて温かい部屋の中。チロルチョコにとっては、致命傷だ。
「(…とけてたりして)」
さっき色々と考えたことを忘れて、俺はリュックを引っ張り出し、中からチロルチョコを出して目の前のテーブルに並べていった。触った感じでは溶けているようには感じないけれど、やっぱり不安だ。シゲは吃驚したままチロルチョコを並べる俺の指を眼で追ってる。漸く六つ並べたところで、ビニール袋を適当に丸めリュックの奥にぐしゃっと押し遣った。
「はい」
どうぞ、と並べたチョコをシゲのほうにずずっと押した。
「溶けてるかもしれないけど……、ちょこ。」
「え、…あ、どうも」
なんか、意外とあっさり渡せたな。案ずるより生むが易し、ってこういうことを言うのか?
シゲはへこっと頭を下げて、チロルチョコを手のひらにとって眺めている。ちらりとシゲの顔を見てみると、意外なことにきょとんとしたまま顔を赤くしていた。
「(シゲが照れてる……)」
珍しい。かわいい。
「チョコ、…こんだけでごめんな」
「ううん、めっちゃ嬉しい!ありがとな」
すっごいにこにこだ。いつもの似非笑いとは違う。
この笑顔も、頻繁には見れないけれど、きっと他の奴には見せない顔だ。
俺だから、見せてくれる顔。
たかがチョコで、喜んでもらえてよかった。俺も渡した甲斐があるものだ。
嬉しい。
「シゲは、…俺のこと好き?」
「好き。もっと、言ってほしい?」
「…そういうんじゃない。あのな……」
おれもすき。
「…おれも、シゲのこと嫌い…じゃない、よ…うん。」
恥ずかしくて、消えるような声で、そっぽを向いて言った。
素直に言えればいいんだけれど、何時も恥ずかしさと、訳の解らない気持ちが邪魔して上手く言えない。何時も、捻くれた言い方になってしまう。
「もっと、ちゃんとゆうて」
ぎゅと抱き寄せられる身体。
毛布越しだけれど、伝わる腕の強さが俺は好き。言葉でなんかいえない、微妙な加減が俺の身体には丁度よくって、心地いい。
するっと、シゲが、俺の肩に頬を摺り寄せる。俺も自然と、ぎゅっとシゲを抱きしめた。
だって、こんなに甘えてくることなんて無いから。
「…何時も不安やねん。たつぼんが、「好き」とか「愛してる」とか、はっきりゆうの、苦手なん知っとるけどな。
たつぼん、器用やないし、浮気とか嘘とか、簡単に解るし、浮気とか絶対できひんて、解ってるけどな」
「(嘘ばれてたのか…)」
シゲが顔を上げて、俺の頬に手を当て二人で目を合わせる。
「けど不安やねん。せやから、俺に「好き」て…ゆうて」
なに、おまえ、泣きそうな顔してんだよ。
シゲ、そんなこと思ってたのか?
ばかだな。
俺もばかだな…。
シゲが不安になってくれるってことは、俺のこと本当に好きだから。
俺も一々不安がったり、本当を疑ってみたりしなくていいんだ。
なんか、少し泣きそうだ。
「シゲ…、…だけ…だいすき。」
雰囲気に流れて、そのまま唇を重ねる。
何度も繰り返す軽いキス。
何時もされる、悪戯めいたキスよりも、自分からしたキスが少し熱い気がした。
ずっと、きっと、多分。
シゲだけが大好き。
できたぁぁ…!!!
とりあえず、美塚に倣って、読みやすさを追求し、以前の私の書いたものよりも改行を増やしてみました。
ゲロ甘仕上げ。書いてる途中恥ずかしくて恥ずかしくてニヤけがとまりませんでした。
なにこいつら、恥ずかしい…!!!!
何でかな、頭が働かないよ。
ああ、そうだ。たつぼんは阿呆なんじゃないよ。生粋の乙女なんだよ。お花畑でウフフアハハ(壊)シゲー、俺を捕まえてごらん名さーい、あはは、たーつぼーん!(壊)
不破君感想。
ウン、確かに書くこと無いよ、ネ(笑)潔さが好きです。
そうだよな、数分しかたってないよ!
渋沢目敏い(鋭いと言え)やっぱその、鋭さで皆をイロイロ、…!!!!(何)今思ったんだけど、シゲ水にくらべ、渋不破はドキドキするんだよ。なんつーか、「おいおい、てめーら一体どうしてこうなってどうすんだ!(訳解らない」と、なんだか続きが気になる。続き気にして待ってます。
スピードアップ中。
二人で愛のゴールに突っ走り中!(待て
Date: 2005/11/16 真冬