ちろるちょこ♥大作戦! ―――Missions5 side:水野竜也
手を繋いで来た道を戻る。なんか今日は大して何も出来なかったな…、と思いつつ一緒に居れただけでまあいいか、と自己納得。
さっき不破とラブホの話が出たせいか、頭に屋上でのえっちの記憶が蘇る。俺にとってはとても良いとはいえない気持ちの儘抱かれた。その時はそういう気分でもなかったし、場所が場所なだけ更に気分が乗り気にはなれなかった。嫌だと抵抗してもシゲが気持ち良くしてくれれば、嫌だといっても身体が納まらない。
今考えれば俺達のえっちってそんなんばっかのような気がする。
何時も、強姦擬いのえっち。たまには、優しく抱かれてみたい。別に、何時も乱暴なわけじゃないけど……。
きっと、渋沢さんはそんなことしないだろうし…不破も大切にされてるんだろうな。羨ましくて、羨ましくてしょうがない。羨んでばかりの俺自身が嫌でしょうがない。
はぁ、ため息が出る。
手を繋いだ儘寺に向かい歩く。ここからだときっと三十分ぐらいで着くはずだ。
「たつぼん、さっき何考えてたん?」
言われてどきっとしてシゲを見る。
まさか、さっきの羨ましいって思ってたのが、ば、ば…れ??
平然を装って念の為聞いてみた。
「さっきって?」
「ほら、俺が家行くゆうたら口塞いだやろ?何考えてたんかなぁって」
言われて気付いた。俺はてっきり「家かえってヤる」みたいな事を言いだすんじゃ、と思ったから口を塞いだんだけど……まさか、言える訳がない。恥ずかしい!
「……何って、べ、べべ…別に」
シゲの顔を見ていたが、居た堪れなくなって顔を逸らす。シゲは心底楽しそうだ。何時も俺をからかうときはにこにこ笑って、その笑みを崩さない。その笑った顔も好きだけど、こういうことで突っ込まれると自分自身如何していいのか解らなくなってしまう。
「たつぼんたらやーらしー」
「ぅうっ……。そんなの、そう思わせるお前が悪いんだろっ」
反論するがそれは反論とはシゲには取られなかったらしく、その後も俺はからかわれ続ける。「そんなん、たつぼんがえっちやからやろー」とか。
えっちなのはどっちだ!処構わず盛る猿め!
「どーでもええけど、寒ぅない?」
「さむい」
「たつぼん薄着してくるからやん。なんで、厚い服着てこぅへんの?」
「…別に、意味はないけど。コート着てきたし平気かとおもっ…ひっ、くしゅっ、くしっ」
嚔を二回した拍子に、たらーっと垂れそうになった鼻水をすする。うーい、ちくしょう。
「コートゆうたって、薄いやん。ほら、風邪引いてまうで」
ふわっと首に絡まるマフラー。シゲの匂いがして、ほかほか暖かい。
「…シゲが風邪ひく」
そうは言うものの、俺は返す気など更々無い。だって本当に、寒い。寒くて死にそうだ。
「バカは風邪ひかん、ゆうやろ?」
「…っぷ、自覚あるんだ」
「ちゃうやん!そこは否定するところやろ!!」
自然と笑みが零れる。怒ってたはずの俺は何時の間にか、笑っている。変なの。
やっぱり、シゲと一緒にいる時間がすごく楽しい。
「せや。はい、たつぼん。」
あっと、気づいたように声を上げると、シゲは立ち止まりジャンパーのポッケから出した板チョコを俺にくれた。
「今日直ぐ渡そ思ってたんやけどな、忘れとったわ。溶けてるかもしれんけど」
「びたーちょこ…」
俺は、繋いでいる手とは逆の手でそれを受け取る。暖かくて、確かに少し溶けてそうだ。
「今日バレンタインやろ?アメリカとかでは、男が女に渡すんやて」
俺は今だに上手く理解が出来ないまま、チョコとシゲを見ている。
「おれに?」
「たつぼん以外にあげる奴なんておらへんて」
にこっとシゲが笑う。俺はつられて苦笑い。
嬉しくないわけじゃない。嬉しくて嬉しくてしょうがないけれど、同時に不安も生まれた。
「(俺、チロルチョコ一個しか用意してない…)」
どうしよう。
とりあえず其処では「ありがとう」と伝えて、再び手を繋いで歩く。
今まで怒ったことよりも、チョコ一つという不安が大きくて会話が上の空、右から左に流れる状態だった。
どうしようどうしよう、と頭が混乱しそうになりながら歩いていると、目の前にコンビニが表れた。俺がデート前に立ち寄ったコンビニだ。すぐ近くに公園もある。
お金はあるし、買うのは問題ない。ただ、シゲだ。シゲにどう大人しく待ってもらうかが問題だ。
このまま歩いていては公園もコンビニも過ぎてしまうため、俺は話を切りだした。
「シゲー」
「ん?」
「俺コンビニに用あるから、公園で待っててくんない?」
「あ!せやったら俺も行くわ。忘れるとこやった…」
「だだ、だめ!すぐ終わるから待ってて!」
「せやけど……」
「いいから、待ってて!」
「……まぁ、たつぼんがそーゆーならええけど」
にこっとまたシゲが笑った。この時点では俺はまだこの笑みの意味も解らず、後に死ぬほど後悔することになるとは解らなかった。
シゲがやっと納得してくれたため、俺は走ってコンビニのお菓子売場に行った。
「……うそぉ」
朝はあんなにも沢山あったチロルチョコは今は五つに減っていた。よくよく考えれば今日はバレンタイン当日。無くなっていて可笑しくはない。五つでもあってよかったと思うべきだ。
俺は落ち込みつつも、それを手に取り会計を済ませた。そしてビニール袋ごとリュックに突っ込んだ。
「(愛想尽かされそうだ……)」
公園に戻ると、俺がしょげているのを察知したシゲが、どないしたん?と頭を撫でながら顔を覗き込む。俺はなんでもない、を繰り返して、またどうでもいいような話をしながら寺へ向かった。
手袋をしてない素手で伝わる暖かい体温が、優しく不安を少し消してくれる。
えっ、なんかまたたつぼん悩んでいるよ?(爆)
これは後々、某交換ですっきり解消されるのですが。ちろるで解消されるかどうかはわかりません。あ、悩みというのは、盛った猿!の悩みです(解らない)
今までが長かった所為か、元は短いものをどうにかどうにか長くしようと足掻いた結果、「えっ、シゲってマフラーなんてしてたの?」という疑問を生むことになってしまいました。
まぁ、二月だし。(笑)
毎回思うんですが。
シゲってにこにこしてるから、「シゲは笑った」とかっていう、説明文が、多く溢れてくるんですよ。
にこにこすんなぁ!(待て)
渋沢さん感想。
確かに2カプは付き合い方が対照的だよね…(笑)
シゲ水は恋人としての付き合い始めは、そんなにはたっていないけど、たしかに出会ってからは長いから、暗闇のなかで足踏んで転ばせても間違ってエルボー喰らわしても『あ、ごめーん』ですむかは解りませんが(笑)まあそんな、気にはしないだろうな…。
長いのお疲れ様。私もこんど、台詞間の中に改行してみようかな。読みやすいだろうし。
今気づいた。
一ヶ月あいてる(爆)
ていうか、一日で仕上げられるぐらいだったら、一週間以内にあげるべきだよな(爆)
Date: 2005/11/06 真冬