ちろるちょこ♥大作戦! ―――Missions4 side:渋沢克朗
「すいません渋沢さん、不破借ります」
昼時のハンバーガーショップ、休日の割には空いている二階席。
その隅の四人がけのボックス席で、なんだか鬼気迫る形相で唐突に水野が立ち上がった。
「え? あぁ、どうぞ」
とりあえず無難な返答を返したものの、むしろ俺の返事を聞く前に、彼は不破くんの腕を引っ張って離れたボックス席へと走っていってしまった。唐突にどうしたんだろうか。
図らずも佐藤と二人きりで取り残され、少々雰囲気に困惑が混じった。元々俺はそんなに口数の多い方というわけでもないので特に話し出すということもなく、目の前に置かれたトレーの中身を片付けながら外を見遣る。さっきの子たちはもう帰っただろうか?
大して間があったわけでもないが、沈黙に耐えられなくなったのか佐藤がコーラを手に話しかけてきた。
「旦那、不破とは仲良ごふっ!?」
台詞の途中で、佐藤は突然盛大にコーラを吹いた。一体何が…
「さ、佐藤? どうかしたのか?」
「…や、えぇと、…なんでもあれへん…」
「そうか?」
明らかに何かあったようだが、それは敢えて言わないことにしたらしい。代わりに手にしたコーラのカップを握りつぶさんばかりにへこませ、何やら眉間に皺を寄せて凝視している。味が悪かったのかもしれない。
「や、まあそれはええねんけど。旦那、不破とは仲良ぅやっとる?」
「え?」
カップから視線を外した佐藤が、先ほど口にしようとしていたらしい問いを発してきた。一瞬対応が遅れ、聞き返してしまう。
「…ああ、まあなんとかね」
不破くんとの状態なんて、上手く言葉に出来たら苦労しないだろうなあ…
内心で思いつつ、無難に返した。何だか俺、ここでは当たり障りの無いことしか言っていないような気がするんだが。
佐藤は何故だか楽しげな───敢えて言えば野次馬的な笑みを浮かべて、殊更興味ありげにのたまった。
「ほおかー、せやったらあっちの方もお盛んなんやろなー」
「あ、あっちって…」
少々雲行きが怪しくなってきた。なんだか良からぬ方向に話が進んでいないか?
「あっちはあっちやん。夜のお遊び」
「や、…そ、れは…」
…うう、やっぱり…
別にこういう話題が突出して嫌いなわけではないが、どうも自分のこととなると俺はこの手の話を口に出すのが苦手だ。やはり生活している場所が場所なだけに仲間たちの猥談を耳にすることや強制的に聞かされることもあるが、やはり他人事とは一線を画した問題だし。それに───…
俯き加減に言葉を濁す俺に、佐藤は肩を竦めて笑った。
「なんや、男やったらはっきりせなあかんで。もーこっちは、言われんでも、めっちゃラブラブやで。可愛えくて…」
夢見るような瞳とでも言うのだろうか、とにかくやたらときらきらした眼で佐藤は何かを思い出すように口元を緩ませる。涎が垂れそうだぞ。
「ああ、それは…良かったな」
そちらの二人には問題も無いようだし、幸せそうで何よりだ。
こんな話題になったことでいろいろと脳裏に問題が浮かんできたが、それらに思考を巡らせていたせいで眉間が寄ってしまっていたような気がする。不機嫌そうに見えていないといいんだが…
「あ、でも旦那は寮やもんな。そら、ヤんのも一苦労やんなぁ」
「一苦労、というか…その…」
…ヤ? 心なしかカタカナに聞こえたんだが。
一転して心配げに聞いてくる佐藤の言葉に、なんと言おうか迷う。
「他にも障害あるん? 壁薄いとか、覗き魔がいるとか?」
「まあ確かに、そういうのも無いことは無いが…」
日常生活のため以上の防音は寮に必要ないので壁が厚いわけでもないし、覗き魔どころかいるのは同室者だ。佐藤の言葉も実質当たっていたが、いやそれよりも。
───これは言わないといけないんだろうか?
しかし佐藤は既に俺の言葉の続きを待って聴く態勢に入っている。
「その…、……まだ…」
語尾なんかはもう、本当に聞こえるか聞こえないかの瀬戸際になったが許して欲しい。大きな声で言えるような内容でもないし。
───まだ、キスくらいしかしてないなんて。
…・あう。顔から湯気が出そうだ…
「旦那は奥手なんやな。時には俺みたいに獣になってみぃ」
「奥手、か…」
ははーん、とでも言いそうな顔で、佐藤が納得したように頷いた。うけけと怪しい笑い声を上げて指をわきわきと動かす。獣…のジェスチャーってことか?
残念ながら、俺には柄じゃないな。
「…そうかもしれないが、…出来るなら、不破くんの望まないことはしたくないんだ」
呟くように言って、微かに笑う。
同性相手に体を開くことは、特に受ける側にとっては並大抵のことじゃないだろう。必ず苦痛が伴うどころか、場合によってはそれしかない場合もあるらしい。
三上あたりから『お前に欲は無いのか』と聞かれたことはある。さすがに普通の男子中学生だから、そういった欲が無いわけがない。だが、不破くんにそういった辛苦を背負わせてまで体を重ねることに、意味など無いと思う。
本人から直接に否の意思を聞いたわけではないが、下手なことをして傷つけてしまう可能性は消しておきたかった。
佐藤がはっとこちらを見て、なんだか落ち込んだような表情になる。何かまずいことを言っただろうか?
「優しぃなー、たつぼんも旦那みたいなんがええんかなぁ」
水野と何かあったんだろうか? しかしさっきはあんなに幸せそうだったのに…複雑な事情なんだろうな。
「いや、そんなことはないだろう? 水野だって、佐藤が佐藤だったから…好きになったんじゃないかな」
「旦那…」
精一杯の笑顔で、なんとか励ましてみる。
水野が佐藤を慕っているのは紛れも無い事実だし、それは佐藤が俺のような性格だったからじゃない。あくまで『佐藤』という個人を、その性格も含めて好きだと思っているはずだ。無理に俺のようになることは無いし、お前は俺の持っていないものを持っているから。
それに水野は結構素直じゃないところがあるようだしな。
佐藤はいつの間にか涙目になって、感極まったように潤んだ眼で肩を震わせている。
「たつぼんに『盛ったサルか!』と言われた悲しみも癒されたわ…」
そんなこと言われてたのか。
というか、水野にいつどこでなにをしたんだ佐藤…
「───そんな旦那に、ええもんやるわ」
「いいもの?」
涙を拭いた佐藤が、唐突に自身のポケットを漁り始める。いいもの、と言われて無条件に喜ぶほど子供ではないし、よく分からないままにその手を視線で追った。
しばしも経たずに佐藤は目的のものを見つけたらしく、嬉しそう───というよりは何か企んでいるような笑みを浮かべて握りこぶしを差し出す。
「手、出し」
「…こう、か?」
言われるままに手のひらを上に向けて右手を差し出すと、ぽとりと軽いものが落とされた。
「来るべき日の為に…」
真面目くさった表情と声音を背負って俺の手のひらに乗ったそれは、桃色の外装に可愛らしくデフォルメされた苺のイラストが描かれている───避妊具だった。所謂コンドーム。香料が付いているのか、人工的な甘い香りが動いた空気に乗ってふわりと漂ってくる。
ああ、また顔が赤くなってるんだろうなあ。
「っこれっ───」
「い、行くかもしれないけど行かない!」
赤面しつつもなんとか言葉を返そうとした俺を遮り、突然水野の声が響いた。佐藤が不思議そうに声を上げていたが、実を言えば俺としてはそれどころじゃなかったりする。
「タツボン? 行くて、どこにや?」
「えっ…!! …ら、…じゃなくって、…もう、会話はいってくんなよ!」
「やったらそないにデカい声出すなや…」
軽い言葉の応酬をしてから、佐藤がこちらに向き直りからからと笑った。
「あー、ええんやって。お礼お礼」
「し、かし、これは…」
何せ場所が場所だ、真昼のファーストフード店で取り出すようなものじゃないはず。TPOの認識が足りない…でも悪意は無いんだよなあ…
「あ、使い方解る?」
「そ、それくらいは分か…じゃなくて!」
保健の授業程度ではあるが。使い方よりも、問題はサイズか? 佐藤と俺では結構身長差があるし。
混乱している割には比較的冷静なことを考えながら、ふと離れた席で水野と会話する不破くんを一瞥する。顔を赤くしてまくし立てる水野に、不思議そうに答えながら頷いた彼。
「…うん、ありがとう」
しばしの後、眼を伏せて───頷いた。そろそろ体温が移って温かくなってきた手の上のスキンを、静かに指で包む。
佐藤は満足そうに頷くと、フライドポテトを口に放り込んで咀嚼した。
「はよしまったほうええで。あんま周り受けのええもんやないからな」
「あ、そ、そうだな…」
危ない、周りから変な目で見られるところだった… とりあえずポケットに仕舞い込み、軽く息をついた。
俺の様子を見ながら、からかうように佐藤が言う。
「ほんまに旦那は純情やなぁ。そんなんで、ちゅーとかその他諸々できるんかぁ?」
「ぅえ!? そ…・れ、は…」
「俺なんかなぁ、さっき公園でちゅーされてんv たつぼん可愛えかったなぁ」
……勘弁してくれ……
俺の心情など知ることもなく、佐藤は嬉しそうに語る。本当に幸せそうだ。
公園で…か。俺にも心当たりは、無いこともない…どころか。
「そ、そうか…。確かに、不破くんもさっき…通りで……」
「さっき?」
ああ、なんだか眼がきらきらしてるぞ佐藤…失言だっただろうか。
身を乗り出して続きを待つ彼に、なんとか言葉を繋ぐ。
「さ、さっき、…表通りで、不破くんも…キスしてくれたんだ」
「お、表通り!!!? 不破もやるやないか……」
いろいろ複雑だったけれど。理由は分からないが、───泣かせてしまったし。
「それに、…公園で待ち合わせをしたんだが、そのときも…いきなり抱き付かれて。…心配なんだ」
しかも何故だか、今日は出会い頭に走って飛び付いてきた。いやまあ実際かなり嬉しかったが、どうしたのかという困惑もある。それに珍しく白に近い服装だったことも、何かあったのかと心配が先に立った。
佐藤は何やら衝撃を受けたようにb眼を見開いたあと、ため息を吐いて肩を竦めた。
「健康的な証拠やないか、不破も段々知識入れて成長してるってことやないの?」
「いや、逆に…具合が悪いんじゃないかって。普段なら、そういうことはあまりしないんだが」
「そらないやろ。ぴんぴんしとるし。それに今日の服装見てみ? 普段の不破見とれば有り得へんけど、可っ愛ええカッコしとるやん。それだけ気合入ってるってことやないか」
立てた親指で背後の二人がいる方を指し示し、佐藤はコーラのカップを呷った。味が悪かったんじゃなかったんだろうか。
「ごふぁっ」
…咽せた。やっぱり…
「気合い? 何に?」
「何ゆうとりますのん社長! 今日は世界中がピンクに染まるバレンタインデーですやん!!!」
どん、とテーブルを叩いて握りこぶしで熱弁する。この場合、時差とかは突っ込んじゃいけないんだろうな…
「そう、だな。…佐藤はもう水野に贈り物をもらったんだろう?」
「え?」
バレンタインでーという言葉で思い出した、そう言えば今日は贈り物を渡す日だったな。まあ、そのせいでここに来る羽目になったんだが…
何の気なしに聞いてみると、意外にきょとんとされた。軽く虚を突かれて見ていると、悩んでいるのだろうか百面相をしている。
「…あー、多分…・まだやけど」
「え? そうか、意外だな…いや、水野だったらなんだかんだですぐに渡してそうだったから」
水野は意地を張っているだけで、誰が見ても佐藤を好いていると分かる。照れながらももうプレゼントとかは渡しているのかと思ったが、意外と違ったようだ。
苦笑して否定し、佐藤はこちらにも同じ問いを返してくる。
「そんなことあらへんよ、旦那の方は? 不破からもろたん?」
「いや。…正直、もらえるとはあまり思ってないんだ。それに不満があるわけではないし」
「スマイル0円できっついこと言う兄ちゃんやの…不破聞いたら泣くで? ……多分」
「いや、なんていうか…知っていたとしても、多分『自分は女ではない』とか『男女のイベントなのだろう?』とか言いそうだなって。そもそも認識として、自分も参加出来るイベントだとは思ってないと思うんだ」
きつい、かな…
───博学だけれど、たまに疎いところもある彼だから。
そんなところも、不破くんらしさだと思うけど。
ハンバーガーを食べ終え、残ったポテトをつまみながら佐藤が言う。
「だったら、今日のデートも旦那から誘ったん?」
「あ、いや、それは不破くんが電話をくれて…」
「せやったら、ただの心配性やな。それやったら絶対知っとるって!」
そう、だろうか。そうかも、しれない。
知っていてくれたら、それが一番嬉しいけれど。
でももう、結果的に今日を一緒に過ごせるから、知らなくても構わない。
多分、俺は───
「───そうかもな。俺は、自分が傷つきたくないだけなのかもしれない」
期待しなければ、傷つかずにいられるから。
彼絡みでは、感情の起伏も、受ける傷も、感じる幸せも、全てが大きな波になるから。
「そんなことゆうてるんやったら、別れればええやん」
なんでもないことのようにポテトに手を伸ばしながら言う佐藤。一瞬だけ、向ける視線が険しくなったことは気付かれなかった。
それが出来なくて悩むからこそ、なんだよ。
信じていないわけじゃない。俺は誰よりも彼を信じてるから。
でも、信じていてもらえる保証は───どこにもない。
そうだと言い切れるほど、まだ長くは一緒に居られていないから。
大丈夫だと思い込めるほど、共に過ごせていないから。
傷つきたくない、けどそれ以上に、傷つけたくない。
曇りの無い瞳で前を見据える彼を、ただ進ませてあげたい。
そのためには、俺が───守る。
何より大切な、君。
「…同じ言葉を返したら、お前はイエスと言えるか?」
「言える訳ないやん。俺めっちゃたつぼんの事愛しとるし」
自信に溢れた笑みで、佐藤がきっぱりと告げる。
「…それと、同じだよ」
まだ中学生の俺たちは、愛なんて言葉を使うには幼いのかもしれないけれど。
それでも、いつか必ず言えるようになる。
愛してるから。
:::*:::*:::*:::
どうやら話が終わったのか、水野と不破くんが連れ立って戻ってきた。
「ありがとうございました、不破返しますね」
「あ、うん。話は終わったのかい?」
「はい」
何を話していたのかは分からないが、俺が気にしても詮無いことだろう。
「お帰り、不破くん」
「……ああ」
いつものように声を掛けるが、何かあったんだろうか。
少しだけ、落ち込んだような声だった気がする。
先ほどのように俺の隣に腰を下ろした不破くんの表情を見遣るが、彼はいつもの無表情だった。佐藤とあんな話をしていたから、そんな風に聞こえたんだろうか。
ふと見れば、佐藤がにこやかに青筋を立てて水野と向き合っている。対する水野も満面の笑顔だったが、何故だか漂う雰囲気に背筋がぞくりとした。
「たつぼん、このコーラめっちゃ刺激的なんやけど…・?」
「そうか、よかった」
「竜也君は、一体何いれたんかなー?」
「俺の愛情」
笑顔の応酬のはずなのに、火花が散っているように見える。やっぱり佐藤のコーラに水野が何かしていたらしいが、ひとまずこの雰囲気をなんとかしたい…
「あ、さ、佐藤たちはこれからどうするんだ?」
ちょっと吃ったが、精一杯笑顔を浮かべて新たな話題提供を試みる。二人ともはっとしてこちらを振り向いてきたので、なんとか成功したんだろうか。
「これから俺ン家に行く予定やけど」
「な、なんでだよ!」
佐藤の言葉に何故か水野が狼狽える。不思議そうに続けながらそちらを向いた佐藤の口を、咄嗟に水野が赤い顔で塞いだ。
「寒い中歩くよりは部屋むごっ」
「人前で言うな!」
「……・たつぼん、さては変なこと考えとったな?」
「え?」
よく分からないやり取りをしてから、佐藤が玩具を見つけた子供のような顔で笑う。
「まー、後でからかうとして。で、旦那たちはどうするん?」
「いや、まだ決めてないんだ。実を言うと、いままでも何をするか決めながら歩いていたくらいで…」
切りのいいタイミングということもあり、昼食の片付けを始める。折り畳んだハンバーガーの包み紙を隅に置いたあたりで、そういえば目的地も決まっていなかったことを思い出した。
「では、俺たちもどこかに腰を落ち着けるとしようか」
「そう、だね…近いところだったら、…松葉寮になるけど。俺の部屋でもいいかい?」
「む、三上はいるのか?」
せっかく不破くんが出かけようと言ってくれたのに、結局行き先が寮というのは申し訳ない気もするんだが。
とりあえず席を立ち、トレーを重ねる。先にごみを捨て、三上との今朝の会話を思い出した。
「確か、笠井と出かけるって言ってたけど」
多分あれでは外泊だろうな…まあ、久々の休日だから仕方ないか。
「そうか、構わん」
「じゃあ、…俺たちも同じ、かな?」
振り向き、何故だかカップの氷を捨てた体勢のまま固まっている佐藤を見つけた。一体何が入っていたのやら…
「…そうか」
「なんか俺たち……ジジくさくないか?」
「たつぼん……愛が感じられへん」
水野の言葉に哀愁を漂わせ、佐藤が悲しげに呟いた。じじくさい、か…たまに言われるが。うう。
「まあ否定も出来ないけど、人それぞれってことだろうな」
「せや! 旦那ええこと言うやないか!」
いつも使う(たまに使われる)言葉で取り成すと、しょぼんとしていた佐藤が水を得た魚のように生き生きとし始める。
「ま、立ち話もなんやし、そろそろ行くか? たつぼん」
「そうだな、お前の寺ってどっちだっけ?」
「毎日来とるようなもんなのに、まだ覚えとらんのかい」
「……・!!!!!」
佐藤の台詞に、水野は真っ赤になって口をぱくぱくしている。毎日来ているようなもの、か。仲がいいんだな。
水野の様子など気にもせず、不破くんが口を開く。
「松葉寮はこっちだったな」
「ああ、そうだね。俺たちはこっちだけど」
ちゃんと覚えていてくれたようだ。
先ほど女の子たちがやってきた方向なので少々気後れするが、寮に入ってしまえば安全…だと思う。多分だが。
「俺らは反対方向やね。───じゃ、健闘を祈るで」
自分たちの進行方向を一瞥して頷き、振り向いた佐藤は、激励するように変わった握りこぶしをこちらに向けた。親指を立てるんじゃなく、人差し指と中指の間に挟んでいる。何か意味があるんだろうか?
それに、健闘と言われても…
「え?」
「何のことだ」
「…分かっとらんならええわ…」
不破くんも知らないらしい。二人揃って疑問符を浮かべると、佐藤は諦めたように乾いた笑いを浮かべながらも口の端を引き攣らせていた。
何か激励の意味のあるサインだったんだろうか? だとしたら分からずに悪いことをしたな。
軽く手を振り、背を向けてお互い反対方向に歩き出した。
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偶然にも、少しだが佐藤と話す時間が出来て、いろいろと参考になったようにも思う。
自分とは、自分たちとは全く違う付き合い方───様々な関係があるんだろう。
佐藤の言うことがすべて正しいとは思わないし、それを鵜呑みにしようとは思わないが、一つの考え方としてはそれも有りなんだろうな。
ぶつかり合うことが全てじゃないけれど、傷つけあって得られるものもあるのかもしれない。
ただ、まだ俺には何が最善か分からないから。
佐藤たちが自分に合う付き合い方を見つけたように、ゆっくりでいいから、俺たちに一番合った付き合い方を見つけていこう。
それまでは、無駄に傷つけたりしないように─── 大切な、君に触れよう。
…長ェェ!!!!
なんですか、史上最長じゃないスかこれ!? スクロールが追っつかないんだけど!!
いやまあそれはどうでもいいんですが、初挑戦・キャプテン一人称。
激ムズだな。
よくわかんないひとになっちゃってませんかコレ…
それとキャプテン視点書いてて思ったんですが、地の文が短いですね。
不破くんサイドでは結構地の文が長いんですよ、あの子いちいち考察するから(爆)
いやまあそれだけなんですが。
濃厚でしたか?(笑)
あと、今回はBGMに忍足のバレキスを聞きながら書きました(笑)
ぴったりじゃないですか、この話そもそもタイトルが【ちろるちょこ♥大作戦!】ですよ?
『♪あなたを呼び出すテレフォンコール 気持ちを分かってほしい』ですよ!?(爆笑)
一度エンドレスで聞きながらこのシリーズ読んでみて下さい(笑)いやホント。お試しあれ。
…と、アホな歌(失礼だな)を聞きながら書いた割にはちょいとシリアス気味なんですが。
私(キャプテン)が言いたかったのは、シゲ水と渋不破では付き合い方が違うってことなんですよ。
ちょっと抽象表現でしたが、シゲ水と違って渋不破は出会ったばかりなわけです。加えて学校も違うし住んでる場所だって歩きじゃ行けないし。
まだシゲと水野みたく、憎まれ口叩いて笑い合えるような関係じゃないんですよ。
キャプテンも、不破くんも、お互い暗闇の手探り状態で。不用意に動いて、相手の足踏んで転ばせたりしてしまわないかって不安でたまらない。
とりあえずシゲと水野なら、暗闇のなかで足踏んで転ばせても間違ってエルボー喰らわしても『あ、ごめーん』で済むだろうけど、渋沢先輩と不破くんでは必要以上に気にしてしまうし。
そんな場所から一歩踏み出せるまで、ゆっくりでもしっかり行きたいね、と。
そんな感じです。
そしてシゲさんサイド感想。ぽけぽけ彼氏、に笑った(笑)
あと、『渋沢は几帳面にハンバーガーの包みを折って隅に置いた』ってところにメチャメチャ頷きました。すっげぇキャプテンやりそう…!!(笑)
あとは上に書いたような感じですな。
さて、長かったミッション4、コンプリートオォォ…!!
次からは受け視点に戻ります。
いよいよ彼の家へ!(笑)
Date: 2005/10/04 秋野