ちろるちょこ♥大作戦! ―――Missions3  side:水野竜也


手を引かれながら、前も見ず歩く。何となく俯いたまま顔を上げられない。景色なんて見えない、目の前のシゲの足がちょこっと見えるだけ。あと、繋いでいる手も。
俺は声が出せない。何を言って良いのかわからない。
不安もあれば、「捨てるなんてばっかじゃねぇの!?」という気持ちも有るし、言ってしまえば、少し嬉しかったりもするけど、その感情を持つことによって俺は自己嫌悪になるし。
「黙れ」と言っても、何時もはバカみたいに喋り続けるシゲは、俺の不機嫌を悟ってか、喋らないし。

ふと、顔を上げるとよく待ち合わせに使われる大噴水の近くに来ていた。大噴水は、先ほどいた公園よりも広く、何かとごちゃごちゃ遊具が一塊においてあったり、ボート乗り場があったりする。市だか、県だかで作った広場らしいが、俺はお世話になったことは無い。
珍しいところにきたな、と、あたりを見渡していると後ろから、キャー……と女の悲鳴が聞こえた。

まさか、
まさか、こんな、


タイミング良く…。



ミッション3:渡そうとする輩がいたら「ちょっとまってて」とにこやかに離れ、飛び蹴りを。


思わず、黙り込んで途轍もなく気まずい雰囲気が流れていたことも忘れ、繋いでいる手を強く握りぐいっと軽く引っ張る。
「シッ、シゲ…、おんな!」
「あー、遠くで黄色い声がすんなぁ」
「ばか!後ろ!」
「え?」
シゲが振り向いたときにはもう遅い。目の前には、いろんな女の顔と、信じられない数が目の前に迫っていた。その女のこの大群は、二つにわかれ(シゲ派と俺派に)、自分達の目標に突進してきた。
俺とシゲはとっさに繋いでいた手を離し、わらわらと群がる女に埋まってしまう。

「水野くぅん!!これ手作りなのー!」
悪いけど、いっ、いらない…!

「佐藤くーん!心をこめたのぉー!」
シゲ…!!!!う、受け取ったら、こ…、…ろ……ッ!!!!
あ、…し、しっと…?


「水野っくん…!!!ハッ!!!!」

ドカッ

「うわっ…!!!」

見事に俺の首に決まったラリアット。バレンタインでラリアットなんて、滅多に無い経験だけど、なんて事する女だと思いながら、よろけ其の侭バランスを崩しずてっと尻餅をついてしまうが、押し出されるチョコの数は俺が受け取らない限り、減ることは無く押し付けられる。相手が諦めれば、俺の足元にたくさんのチョコが置かれてゆく。一個二個……五個六個七個…。なんだか、チョコで小山が一つ作れそうだ。
ラリアットの所為か、頭がすんごくくらくらする。吐きそうだ。けど、ここで吐いたら俺の人権は無いものと考えたい。一生の恥だ。
「水野君、へいき?キスする?」
「チョコ食べたら楽になるかもよ!」
女の話って良くわからない、なんで、吐き気がしてくらくらしてるときにキスやチョコを食べたりしたら楽になるんだろう。

畜生、だから自分勝手な女って嫌いだ。


どうしよう、シゲの声が聞こえない。
キャーキャー煩いな、黙って欲しい。
シゲどっか行っちゃったかもしれない、俺不機嫌だったし。会って早々、怒鳴っちゃったし。

シゲの声が聞こえない。

「きゃっ!」
「やぁんっ」

横から、何かしら穏やかでは無い悲鳴が聞こえ、はっとそっちを見る。まさか、雪崩れ崩しに転んだりしたら、と考えが働き、ひざに手をやりよろよろと立ち上がろうとした、刹那。

「たつぼん!!!」
「ぅあっ、ぎゃ!」

膝にやっていた手首をぐいっと引っ張られ、バランスを崩すがどうにか持ち直し、引っ張られるまま足を動かし無我夢中で走っていた。
女の子達は、やっぱり諦められず追いかけていた子もいたけれど、俺達の体力についていけずどんどんと数が減り、仕舞いには誰一人とも追ってはこ無くなった。といっても、ラリアット後の俺にはちょっときつい運動だ。
足を止めてから一気に目が回り、とっさに口を押さえる。
「ぅぇ」
「え?」
「きも……ち、わるい」
「え、大丈夫なん?あ、ベンチ有るから座る?便所で吐く?」
吐けるわけが無い。吐きたくても堪えてやる。
「……すわる」
シゲにつれられ、ゆっくりと広場のベンチに座る。その広場の所々にピクニックをしている家族連れを見つけた。
「(…ピクニック、最後にいったの何時だっけ……覚えてない。シゲとどっかいきたいな……、どっか、海とか)」
シゲに凭れ掛かりながらぼけーとその家族を見ていたら、だんだん悲しくなってきた。涙は出ないけど、悲しくて寂しい。
「シゲ…」
「んー?」
「どっか、いこう。今度、海とか」
「ええよー、海なぁ、たつぼんの水着姿が拝める♥」
「…オヤジくさ」
何で怒ってたんだか、未だに原因は忘れられないけど、シゲの気持ちも解った。だから、今回は俺が悪いかもしれない。でも、素直に謝るのもなんか、癪に障る。


……………………ちゅ。

「たつぼん?お子様が見とるよ…?」
「口じゃないんだから良いだろ」
「……、あ」
そう言うことか、と何となくシゲも気づいたようだ。吃驚して、頬を押さえた後、よかったとにへらと笑う。
俺は今更ながら、恥ずかしさが来て顔を真っ赤にしながらもシゲと繋いだ手は離さない。

これから、あの女の子が追っかけてこなければいいと、できれば、不破と渋沢(だっけ?)の間にも、こんなにも大勢の人が来なければ、と心の底から願った。




ちょっと一時間程オーバーしてしまいましたが、どうにかあげられた…。よかった。よかったねたつぼん。
この回について、色々突っ込みたいところが有るんですが、とりあえず最重要なのが不破の彼氏、渋沢の名前がうろ覚えだってことですね。彼は名前と顔があんまり一致しない子だったら面白い。覚えるのに二週間ぐらいかかればいいな。ちなみに私は短くて一ヶ月です(ぇ)
ミッションはラリアットされたとき、きっと頭から消えました。
ラリアット、したよ?(笑)


不破君感想
何この子!(ェ)
超積極的やな、押し倒してる。さすがのたつぼんも出来ないよ(ていうかされる側だし/笑)そんで、キャプは出てきましたね。次回のキャプの行動が楽しみでなりません。急にティティとか歌ったら如何しようね(歌わねぇよ)

京介さんがいったい何を着せたのか気になります(笑)

Date: 2005/05/25   真冬