ちろるちょこ♥大作戦! ―――Missions3 side:不破大地
集合場所であるこの公園には、未だひとけが無い。まあ、あったらあったで計画第二段階目のうち『元気に!』の部分は達成困難だっただろう。結果的には良しということで、俺はベンチに腰を下ろした。
「───と、じゃあ今日はどうしようか?」
「そうだな…」
次いで改めてベンチに座った渋沢が尋ねてくる。
普段ならば出掛ける際はスポーツ用品店を眺めたり、映画を観に行くなどするのだが、如何せん今日はバレンタインデーだ。もしや、何かバレンタインデーならではの行くべき場所があるのではないだろうか?
生憎水野からのメールにはそれらしきことは何も書いていなかった、故にここはそれとなく探りを入れてみるべきかもしれん。
「お前は、どこか行きたい場所は無いのか?」
「うーん、特にはないけど…」
予想外に、渋沢は首を傾げて思案げな素振りを見せた。これは、一般的にはバレンタインに行かねばならん場所など無いということなのだろうか?
「とりあえず…歩きながら決めようか。話してるうちに見つかるかもしれないし」
「了解した」
ベンチから立ち上がり、連れ立って小さな公園を後にする。
そう、まだ何もかも始まったばかりなのだ。
:::*:::*:::*:::
待ち合わせ場所から徒歩にて移動してきたのは、武蔵森学園に近い大きなアーケード街だった。
アクセサリーショップや喫茶店、ファッション雑貨の店などが立ち並ぶ若者向けの並びにはそこかしこにリボンや花などで飾りつけられた【バレンタインフェア】やらの文字が強調され、全体的に桃色がかった空間となっている。歩いている人間も大多数がカップルまたは女性の二人連れやグループで、俺達のような男二人連れはいなくもないが珍しかった。気のせいなのかそうでもないのか、好奇の視線が向けられている気がする。
対照的に気付いているのかいないのか、隣を歩く渋沢はのんびりと歩を進めていた。
「さて、本当にどこへ行こうね」
「さっきも言ったが、本当に行きたい場所はないのか?」
「どうしたの、なんだかこだわってるけど…」
「いや、特にそうでもないが」
「そう? ならいいけど…不破くんはどこか行きたいところは?」
「…よく、分からんのでな」
「あはは、そっか」
とりとめも無く目的地を探す会話をしながら、アーケードの下をゆっくりと流れる。
ふと、すれ違ったとあるカップルの会話が耳に入り、俺は思わず踏み出しかけた足を半歩で止めた。
「───なあなあ、今日くらいは行こうぜ?」
「えー? 行くってどこにー?」
「バッカ、ラブホに決まってんじゃん。バレンタインだろ? チョコ以外にも彼氏にくれたっていいっしょ」
「そーねー、…仕方ないなあもう。バレンタインだけだかんね? こんな簡単にいくの」
「っしゃ! そんじゃ、まずはメシ食いに───」
「…不破くん? 何かあったの?」
足を止めた俺の様子に訝しんだらしい渋沢が声をかけてくるが、俺はたった今耳にした会話に思考を奪われ、それに答えることすらも出来なかった。
今のは何気なく耳に飛び込んできた会話だったが、素晴らしく有益な情報だった。
新たに得ることの出来た知識として、とりあえず『バレンタインは【ラブホ】なるものに行くことに決まっている』らしいこと、『バレンタインにはチョコレート以外にも彼氏に贈るものがある』らしいこと、が挙げられる。
しかし、前者の【ラブホ】という場所に関してはこれから向かうことが可能だろうが、問題は後者の【チョコレート以外に贈るもの】である。水野からのメールや周囲から情報では全くもって触れられていなかった事柄だった。
これは由々しき事態ではないか? 今まで全く知らずに計画を遂行してきたが、よもや自分で手に入れて贈らねばならないものがまだあるとは…
今現在までの渋沢の様子としては、そんなものへの期待などは全く見られない。知っていて敢えて知らないふりをしているのか、本当にそんなものの存在を知らないのか、知っているが最初から期待していないのか。最後の可能性は何故か かなり好ましくない気がするが、この際はその様子に甘えてしばらく情報収集を続けよう。それに、その【もの】を贈るには【ラブホ】なる場所へ赴かねばならないようだ。
従ってまず優先されるのは、【ラブホ】がどのような場所であるのか、どこにあるのかの把握。
「───渋沢」
ようやく顔を上げれば、唐突に立ち止まった挙句黙考し始めた俺を心配げに覗き込んでいる鳶色の瞳と視線が合う。
「どうか、したのかい? 具合が悪いとか…」
「いや、大丈夫だ。すまなかった」
こうして簡単に謝罪の言葉が出るようになったのは、渋沢と共に過ごした時間の賜物だと思う。
まあそれは置いておくが、どうやら本気で心配させてしまったようだ。申し訳なく思いつつも、何故だか嬉しさがこみ上げてくる。
笑みを押し殺し、しっかりと眼を合わせて俺は問いを放った。
「渋沢、少々聞きたいのだが」
「なんだい?」
「【ラブホ】とは、何を目的とする場所なんだ? それと、それはこの近くにあるのか?」
「…え?」
「聞こえなかったか。【ラブホ】とは何を目的とする施設で、尚且つそれはこの近くに───」
「いやいやいや、ちょっ、ちょっと待って」
眼を瞬かせ、困ったように視線を泳がせる渋沢。狼狽したようなその表情は、何を表しているのか。【ラブホ】がうろたえるような場所であるということだろうか?
「…あの、不破くんはなんでそれを聞きたいの?」
「今通ったカップルが、バレンタインだから【ラブホ】に行くと言っていたのでな。今日ならではの場所ならば、そこへ行こうかと思ったのだ。故に聞きたい、【ラブホ】とはなんだ?」
「っそ、れは───」
「その質問には私が答えよう、大地」
唐突に渋沢の台詞を遮って現われた人影は、───今朝も顔をあわせた人物だった。
「京介…」
「黒須くん?」
今朝方見たスーツ姿のまま、振り返ったらいきなりそこに立っていた京介は相変わらず無表情で渋沢に一礼した。
渋沢のことは、京介が以前俺の家に泊まりにきていた際に紹介してある。取引先の社長相手ですら不躾な口調の我がはとこが、渋沢相手には何故か敬語で話すのには少々驚いた。何か、渋沢にはそうさせるオーラでもあるのだろうか。
ともかく、人の好き嫌いが激しめの京介も渋沢のことは気に入っているようだ。
「お久しぶりです、渋沢さん。お元気そうで何よりです」
「黒須くんも元気だったかい? 今は仕事なのかな」
「いえ、私用で。───それより大地、先ほどのお前の問いについてだが」
簡単な挨拶を交わした後、京介は俺に向き直った。渋沢が慌てて何か言おうとしているが、その前にはとこが口を開く。
「【ラブホ】とは、俗に言うラブホテルの略だ。ラブホテルとは、洋風の───」
そのとき、自身の言葉を遮るように京介のポケットから電子音が鳴り響いた。ふと言葉を止めると、一言詫びてから携帯電話を取り出して通話ボタンを押し耳元に当てる。
「はい───」
『てめぇ今どこで何してんだよ!! すぐ戻ってこい京介!!』
雑踏の中であるにも関わらず、受話器の向こうにいる相手の声は普通にこちらまで届いた。俺達にすら聞こえるほどの大音量を耳元で受けた京介は、たまらず携帯電話を持った手を耳から遠ざけ反対方向に仰け反っている。
「…朝言っていた恋人か?」
「ああ。お前達を見かけたので一言断った後に置いてきたのだが、時間がかかりすぎたようだな」
俺達と京介が会ってからまだ一分も経っていないのだが、どうやら奴の恋人はかなり気難しいらしい。
「そこも可愛いのだがな。盲目的だとは自覚しているが、愛とはそういうものだ」
「…毎度毎度人の心を読むな」
「それは悪かった。では失礼しよう」
「待て、京介。最後に答えを教えてから行け」
即刻立ち去ろうとした京介を呼び止め、続きを聞く。洋風の、なんなのだ?
ああ、と思い出したように足を止めて振り向くと、京介は意味深に笑んで囁いた。
「───洋風の、連れ込み宿だ。行くならばそこのビルの陰に一件あるぞ」
「連れ込み宿…」
「まあ何をするかは敢えて聞かんが、健闘を祈る。ではな」
一階にマクドナルドの入ったショッピングモールを指し示し、京介はこちらに軽く手を振った後駆けていった。
どうやら彼とその恋人は、すぐ近くのカフェテラスにいたようだ。京介が一つのテーブルに近づき、そこに座っている茶髪の麗人(?)と何かしら言葉を交わす。眉間にきつく皺を寄せているものの、京介の待ち人は一見西洋人とも見紛うほどの白い肌と青い瞳を持つ美しい人物だった。結構な剣幕で京介に食って掛かった彼だか彼女は、不意に落とされたキスでこちらからも分かるほど真っ赤になって黙り込んだ。
「うわー…」
赤面が伝染したかのように、隣を見上げると渋沢までもがうっすらと顔を赤くしている。
まるでホストの如き所作に呆れて見ていると、京介はふと顔を上げてこちらに視線をくれた。瞬間、にやりと口の端を吊り上げると、再度恋人の肩を抱いて深く口付ける。
しばらくしてからゆっくりと顔を離した彼は、もう一度こちらを見て片眼を瞑ってみせた。
「…っ!」
見せ付けられたことを自覚すると、一気に悔しさともつかない感情が沸き起こる。
「───行くぞ、渋沢」
「あ、うん」
隣の渋沢の腕を引き、俺は京介らに背を向けて通りをずんずんと歩き出した。
俺は一体、何が不満なのだろうか?
「───っ不破くん、不破くん!」
いつのまにか意識せずにペースが速くなっていたらしく、はっと気付いて足を止める。隣を見上げると、渋沢が微かに眉を寄せてこちらを見ていた。
「不破くん…」
「───すまなかった、つい…怒らないでくれ」
「ああ、ごめん、怒っているわけじゃないんだ。…不破くん、今日は何かあったのかい?」
「何?」
「なんだか、今日はいつもと違うなと思って」
内心ぎくりとする。これは渋沢の勘が鋭いのか、俺の言動行動があからさま過ぎたのか?
「…いや、特に何もない。ただ───」
「うん、どうしたの?」
「…ただ、先程京介とその恋人を見て、…なんだかおかしな気分になった。悔しさにも似ているが、この気分は、なんと言ったか───」
「不破くん…」
なんと言ったか、思い出せない。過去に数度経験したこの感情は、なんと言ったのか。
桜上水中の校内で、佐藤と水野が連れ立って歩き笑っていたのを見たとき。
選抜へ行く途中の風祭と会った際、今日は天城と帰るのだと幸せそうに呟いたのを聞いたとき。
そして、いま京介と恋人が口付け合うのを見せられたとき───
「…羨ましかった」
ぽつりと、言葉が漏れた。
「え?」
「そうだ、羨ましい、だな。この気持ちは」
俺は、羨ましかったのか。
この感情は───
渋沢の顔を改めて見つめる。優しげで、整っていて、でも素朴な、見慣れた顔。
柔らかい茶色の、光を弾いて輝く髪。
黒目がちな、笑うと優しく細められる瞳。
照れるとすぐに赤くなる、白い頬。
そして、いつも穏やかに俺の名を呼ぶ唇───
「…え?」
今立っているこの場所が往来だということも忘れ、吸い寄せられるようにその唇へキスをした。
「───っ!」
直後に、自分のしでかしたことに気付いて思わず頬に片手を当てる。血液が上昇してくるのが手に取るように分かった。
「す、すまん! っその、なんと言うか、思わず、あの、……ごめん、なさい…」
語尾が段々と小さくなる。らしくもなく動転している自分が、ひどく滑稽だと思った。
人通りもある往来で、俺は何を───
モラルも何もない、あまりにもらしからぬ行動だ。
うつむいたまま顔を上げられず、渋沢の顔を見られない。
視線は感じるが、どんな表情で俺を見ているのか。
怒らせてしまっただろうか?
今日はどうにも物事が上手く運べない、無理に普段の自分とはかけ離れた行動をしようとしているからなのか。
機嫌を損ねることだけはしたくないのに───
「…どうして───」
「…っ…」
ついに、言葉が掛けられた。思わず、身体がびくりと震える。困惑したように聞こえるその声音が、今の俺にはひどく堪えた。
「……、───顔を上げて、不破くん」
ふと、下を向いたままの俺の眼に渋沢の手が見えた。それは俺の頬に添えられ、ゆっくりと顔を上げさせる。
いつの間にか滲んでいた視界に映った彼の表情は───当惑しながらも、微笑んでいた。
「…そんな、涙目になるくらい怯えなくてもいいのに…怒ってないよ」
「し、かし、俺は───」
「俺は、嬉しかったよ?」
「……え?」
思わず、間の抜けた声を上げてしまう。
見つめ返す視線の先、渋沢が笑みを深くして囁いた。
「そんな風に思ってくれるだけでも十分なのに、不破くんからキスを貰えるなんて…俺って幸せだなぁって思う」
いつもと同じ笑顔のはずなのに。
───何故だか、涙がこぼれた。
「ふっ、不破くん!? あの、俺何か悪いこと言ったかな…?」
先程の俺のように渋沢が慌てふためき、少し屈んで俺の様子を伺う。鳶色の瞳が、落ち着かないと言うように揺らいだ。
白い服の袖で眦を拭い、今度はしっかりと顔を上げる。
「違う。…渋沢」
「な、なんだい?」
「───ありがとう。」
『ありがとう』
この言葉も、渋沢と共に過ごすようになってから覚えたものだ。
「何を唐突にと思うかもしれんが、今ふと思ったのだ。お前が隣にいてくれることとは…通常には有り難き幸せなのだと。だから、───有り難うだ渋沢」
「不破くん…」
「俺と共にいてくれて、ありがとう」
脈絡は無い。ただ、そう言いたくなった。
目の前の、何より優しい恋人に。
俺の言葉に軽く眼を見開いていた渋沢が、最後の台詞を聞いてふわりと笑った。
「───それは、俺も同じなんだよ、不破くん。…俺と一緒にいてくれて、ありがとう…」
:::*:::*:::*:::
「あっ、あれもしかして渋沢くんじゃない!?」
「え!? ───ああ!! 渋沢せんぱーいっ!」
「ちょっ、ホントにいたわ!! 先輩っ!!」
「───え?」
唐突に、遠くで女子特有の高い声が聞こえた。それだけならば気に留めることもないのだが、発せられた言葉の中に自分の恋人の名があった場合さすがに無視出来るものではない。
中三男子にしては背が高めな渋沢は、往来の真ん中においても非常に見つけやすい。俺達が背を向けている方向───武蔵森学園の寮がある方向から聞こえてくる複数の女子の歓声というか騒ぐ声は、一目散にこちらを目指してきていた。
一瞬固まったのち、渋沢はぎぎぎぎと音を立てそうな動きで背後に眼を向ける。
予想通りというべきか、振り向いた俺達の眼に映ったのは、周囲の目など気にも留めずこちらに──正しくは渋沢に──向かって通りを爆走してくる大勢の女子たちの姿だった。
ふと、計画第三段階のことを思い出す。携帯電話を取り出している暇など無いが、確かこのような場合のミッションではなかったか。
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〜
・ミッション3
彼にチョコを渡そうとする輩がいたら
「ちょっとまってて」とにこやかに離れ、跳び蹴りを。
〜
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「まずっ…!!」
渋沢は慌てて俺を自分の背後に隠そうとしたが、時既に遅し。怒涛の如く殺到する女子の波に飲み込まれ、一気に互いの姿が見えなくなった。
「渋沢君っ、チョコレートなの!」
「先輩、これ受け取って下さい!!」
勢い、熱気、どれも初めて体験するほどの強さである。
そばにいるだけの俺ですら、身を縮めて耐えねばならないほどなのだ。標的にされている渋沢は無事なのだろうか?
「渋沢く──ん!!」
すぐそばで大声を上げられ、思わずそちらに眼を向ける。と、大柄な女子が諸手を広げて走ってくるのが視界に入った。殺気かとすら思えるほどの勢いに、つい殴り合いをするときのような迎え討つ体勢になってしまう。
だがしかし、すぐに思い直した。如何に凄まじい勢いと言えど、考えてみれば相手は───好きな相手にチョコレートを贈ろうとするだけの女子なのだ。俺はフェミニストではないが、さすがに跳び蹴りは行き過ぎなのではないか? 水野は本当に第三段階を遂行したのだろうか?
一瞬のうちにそんな思考を巡らせ、気付いた時にはもう遅い。
「ぐうっ…!!」
走ってくる女子の広げた右上腕が、防御の遅れた俺の首元に見事に入った。偶然の産物のようだが、俗に言うラリアットという体術になっていたように思う。
腕を思い切り気管にぶつけられ、ひどく息が詰まった。
「───っぶ、さわっ…!」
周囲にいるだけでこの状態だ、当事者は本当に大丈夫なのか?
無理に呼吸を鎮めようとして咳き込み、自然と涙でぼやけた視界のまま名を呼びながら渋沢の姿を探す。
「っ不破くん!!」
不意に名を呼ばれ、はっと顔を上げる。無意識に差し出した手を即座に摑まれ、導かれるままに走り出した。
「渋沢くーん、待ってーっ!」
「チョコ貰ってって下さーい!!」
猶も追ってくる女子を振り切ろうと、全速力で先程京介の示したビルの脇へと駆け込む。一階はファーストフード店になっていて、現在そんな余裕は無いが、普段ならばガラス張りの壁面から店内の客の姿が伺えた。
と───、
『っ旦那アァァっ!!』
『不破ぁっ!!』
だんだんだんだんだん
『お、お客様っ!?』
店内から唐突にくぐもった叫び声が聞こえた。同時にガラス窓が内側から叩かれ、大きな振動となって揺れる。
「っ佐藤っ!?」
「み、ずの…・っ!?」
そちらを見やれば、なんと丁度席に着いたところらしい佐藤と水野の姿が見えた。こちらが追われていることを察して呼んでくれたのか、ビルの影になっている店の入り口と自分たちの背後を指してしきりに手招きしている。
「不破くん、もうちょっと頑張って!」
「あ、あ…っ!」
思った以上にラリアットのダメージは大きかったらしい。普段ならばどうということもない距離と時間が、果てしない苦痛に思える。今はただ、渋沢に摑まれた手だけが頼りだった。
必死で足を動かし、追っ手が来ないうちに次の角を曲がってマクドナルド店内に駆け込む。店員が驚いた顔をしていたが、ガラス張りの外を見遣って事情を察してくれたのか入り口付近に店員数人がさりげなく並び、店内を隠してくれた。
窓際の席で待ち受ける佐藤と水野のところへ一目散に駆け寄り、その背後に隠してもらう。落ち着く間もなく外を伺えば、俺達を見失った女子たちがきょろきょろと周囲を見回しながら右往左往していた。
「ああもう、せっかく藤代くんから聞いて、やっと見つけたのにぃ…・」
「え、あたし三上先輩から聞いたよ?」
「私は笠井くん」
「私根岸先輩からー!」
「あたしは辰巳くんからだよ」
「中西先輩が教えてくれたんだけど」
「…あいつら…」
女子の会話を漏れ聞いて、渋沢が口の端を引きつらせる。女子の口から出た名前は、いずれも渋沢のチームメイトで同じ松葉寮生たちだ。
猶も女子たちは辺りを探していたが、さすがに大挙してファーストフード店に入ってくる気はないのか、数分後にやっと思い思いに散っていった。
ようやく一息つけて、二人盛大にため息をつく。成り行きを見守っていた店内の客から笑いがさざめいたが、構ってはいられない。
「モテる男は辛いのー」
外の様子を伺っていた佐藤が振り向き、楽しげに茶化してくる。その脇で水野が小声でジジくさ、と呆れたように呟いた。
ラリアットで傷めた喉を気にしつつ、なんとか言葉を返す。
「過去の統計によれば毎年この日は佐藤と水野の周囲においても似たような現象が起こっていたが、お前たちも辛かったのか?」
「あ、いや、えっと…」
「黙秘しマース」
言葉に詰まってうっすらと赤面する水野と、けらけら笑いながら流す佐藤。それに苦笑しながら、渋沢が立ち上がって二人に礼を言った。
「ともかく助かったよ、佐藤、水野」
「なーんの、お互い様やん。…せや、どうせやし一緒にメシ食わん? 俺らも今から注文やし」
「───そうだね、そろそろお昼にしても…不破くんはここでいい?」
「構わん」
「なら、お言葉に甘えてご一緒させてもらうよ」
「ほな、注文いこか」
立ち上がる佐藤、水野と連れ立ってレジへ向かう。先程気を利かせて人間障壁を作ってくれた店員たちに軽く頭を下げつつ、俺達は謀らずも運動の後の昼食を摂ることとなったのだった。
計画段三段階は、残念ながら完遂出来たとは言い難い。
だがしかし、手段はともかくとしてこのミッションの目的であろう『相手にチョコレートを渡させない』という事項はクリア出来たと思われる。
よって、
───Mission Complete!
…もうなんちゅうか、長さについて言及するのが馬鹿馬鹿しくなったのでもうこれから言いません。ハイ。
てか途中。ちうのシーン。 …バカップル…!!(戦慄)
これはアレですね、あのちうのシーン(アゲイン)を書いてる時にT.○.Revolutionのサンダーバード聴いてたからではなかろうかと思われます(爆)
まあ考えてみれば、結局たつぼんも不破くんもミッション3はこなしてないよね…
でも私もラリアット、したよ?(爆笑)
あと、京介がめちゃくちゃ出張っててすいません…! だって動かしやすくて!(爆) 京介の恋人は、これからの話(ちろるの後の話)の布石です。誰だか分かる…ワケねェな。つうか分かったらスゴイっす。いつかはバレますが、ちょっと禁断のネタ…?(オイ) 恐らく知っている(且つ萌えている)のは世界で二人しかいないであろうカップリングです(笑)
で、たつぼんサイド感想。
「水野っくん…!!! ハッ!!!!」
にたまげました(笑) 気合の息吹が…!! 恐るべしおなご。
シゲさんの気持ちもなんとか分かったらしいですし、これからはラブく展開していく予感がします(笑)
さあ次は四人一緒にメシじゃあ! また京介に会ったらどうしよう!!(ヤメロ)
Date: 2005/05/31 秋野