ちろるちょこ♥大作戦! ───Prologue


「ああもう、なんで今日に限って授業長引くんだよ…早く行かないと購買混みまくるってのに。
 ───うわっ、もうこんな… すいませーん、これとこれ下さい!」
「はいよ、ちょっと待ってねー」
「はい。───にしても、今日はやたら甘ったるい匂いが…」

「───ねえねえ、今度誰にあげるの?」
「えー? やっぱサッカー部のー…」
「あ、やっぱり? 最近サッカー部いいよねっ」
「うん、勝ち進んでるしねー」
「それにレギュラーとか結構イケメン多いし」
「やっぱシゲちゃん?」
「え、水野くん」
「うわ出たっ」
「でも風祭くんも良くない?」
「可愛いよねー!」
「あ、だめ不破くん忘れてるよ」
「えー、クラッシャー!?」
「でも確かにいいよ、今まで怖かったからよく分かんなかったけど、顔かなりイケてる」
「あとサッカー部入ってからなんか丸くなったよねー」
「うんうん、分かる! むしろボケてて可愛いよ」
「ねー!」
「ていうかバレンタイン休みって有り得ないしー」
「今日しかないじゃんね」

「…そうか、明日バレンタインなのか…どうりで」
「はい、お待ちっ」
「あ、どうも…」

「…バレンタイン、か…」



「あ、不破」
「───水野か。なんだ」
「何っていうか…そうだ、メシ一緒に食わないか?」
「構わんが」
「じゃあ、人いなそうなとこ行こう」
「何故だ?」
「や、ちょっと」



「───結局屋上の隅か」
「昼休みはどこもここも人多いからな…」
「───さて、では用件はなんだ?」
「え?」
「先ほどからのお前の様子や行動を総合して考えると、お前は俺に何か話があるようだが違うか」
「いや、まあその」
「しかもお前のらしくもなくそわそわした態度から見ればそれなりに重要な内容のようだが、それを相談する対象として選んだのが仲の良い佐藤や風祭ではなく例え偶然見かけた故に過ぎないとしても俺だというのが非常に興味深い。聞かせてもらおう。さあ」
「……、…明日」
「明日がどうした」
「何の日か分かるか?」
「二月十四日、第二土曜だ。サッカー部も休みだな」
「…他には?」
「聖バレンタイン司教が処刑された日でもある」
「……一般的には?」
「製菓会社が作り出した、女性が自身の想う男性にチョコレートを贈り愛を告白する日のようだ」
「知ってるのか」
「常識だろう」
「……お前に言われるとなんかむかつく」
「何故だ」
「いや、いいけどさ。───不破って武蔵森の渋沢さんと付き合ってるんだろ?」
「その通りだが。そういうお前は佐藤と交際しているんだったな」
「………まあ、一応。一応」
「何故繰り返す」
「いいから。…で、どうなんだ?」
「どうとは」
「や、だから…渋沢さんとの関係」
「ああ。───現在の時点では良好だな。希望を言えば一生涯この状態を保持したいところだ、俺の精神的な健康を考えればだが」
「…もしかして俺、さり気に惚気られてるのかコレ」
「惚気たか?」
「もうモロに。渋沢さん、アナタこんなとこで密かに報われてますよ…」
「遠い眼をするな。それで肝心の話はどうなった?」
「あー…とりあえず、明日不破はチョコ渡すのか?」
「脈絡がないような気がするが。誰にだ?」
「渋沢さんに」
「何故」
「…何故って」
「明日チョコレートを渡すのは女性だろう」
「…いや、まあ大抵はそうなんだけど。とりあえず、…えーと…俺らって、………女役、じゃん」
「───まあ、そうだな」
「で、シゲとか渋沢さんと付き合ってるのは、俺らだよな」
「ああ」
「彼女とかいる男は彼女からチョコ貰えるのに、あいつら彼女いないから貰えないよな。まあ女の子からは山ほど貰えるんだろうけど」
「女ではないが交際しているのは俺たちだ」
「…可哀想、じゃないか?」
「チョコレートを貰えないと可哀想なのか?」
「いやまあ違うっちゃ違うけど、付き合ってる相手から貰えない男は可哀想なんじゃないか」
「では俺たちも可哀想ということか」
「や、この場合は男役ってことだけど……ああいやだ生々しい」
「つまりお前は何が言いたいんだ?」
「───要するに! 明日は女や女役が好きな相手にチョコをあげて告白する日だから俺たちもとりあえずあいつらにチョコをあげるべきなんじゃないかと思ったんだよ!」
「…そうか。では二月十四日、そしてそのなかでも特にバレンタインデーという項目においての俺の認識に誤りがあったのだな。訂正しておこう」
「……反応それだけか?」
「いや。今お前から仕入れた情報では、バレンタインデーとは『女や女役が好意を持つ相手にチョコレートを贈り愛を告白する日』なのだろう」
「そう、だな」
「それに従って行動するのなら、俺は明日渋沢にチョコレートを贈り改めて愛を告白しなければならない」
「……うぅわ言っちゃったよこのひと」
「何か問題発言でもあったか?」
「あーもうなんでもないから。いいから。」
「しかし、具体的にはどうしたら良いものだろうか。日頃お前たちの言うところによると、俺には一般常識が無いのだろう? 取り返しのつかないことを仕出かしかねん」
「自覚あるんだ…」
「お前たちが言ったのだろう。無いよりはましだ」
「まあな」
「───お前はどうするんだ?」
「え?」
「お前が自分で言ったのではないか、女や女役が好意を持つ相手にチョコレートを贈り告白する日だと。それに従えばお前も佐藤にチョコレートを贈るのだろう?」
「……」
「違うのか?」
「───……渡そうと、思う」
「そうか。幸いにしてお前も俺と同じ状況にあるようだな。しかし決定的に違うのはお前は世間一般で言うところのバレンタインデーについて知っている、故に質問しよう。どうすればいいのだ?」
「え?」
「明日の一連の行動について詳細に教えて欲しいのだが」
「ちょっとちょっと不破さん、目がマジなんですけど」
「俺はいつでも本気だが」
「……」
「水野」
「───…分かった。じゃあ、夜に詳しいことメールするから。それでいいか?」
「ああ、感謝する」
「…っ!?」
「どうした」
「おまっ、いま笑っ…!? しかも超にっこり…っ!?」
「?」
「…もう、チョコ渡すより今の顔してやったほうがいいんじゃないのか…」
「…よく分からんが。では夜、連絡を待っている」
「あ、ああ……」




頭痛い始まり方ですみません秋野です…(爆)
さあ続きいけ真冬!(無責任)
ていうかふと思ったんだけどこの話ってサブタイトル【水野くん奮闘記】でいいんじゃないだろか(笑)

Date: 2005/05/05   秋野